安全への挑戦

職場からのたたかい
青森運輸区分会 原因究明委員会
併発事故を未然に防いだ信号冒進事故の教訓


 2010年11月5日18時38分頃、津軽海峡線新油川信号所において341M(普通列車)が出発信号機を冒進する事象が発生しました。
 341Mは青森駅を5分遅れで発車、進油側(信)下り本線所定停止位置に7分遅れで停車した。その時すでに中線に貨物列車が停車していた。上り特急列車が通過後、中線出発信号機が進行現示となり、車掌からのブザー合図により信号機を喚呼2分遅れで発車した。その後、出発信号機の冒進に気付き非常ブレーキを扱うのと同時にATSが鳴動、非常ブレーキが動作したため防護無線を発報し、信号機を17メートル行き過ぎて停止した。その後、車掌と指令に連絡し、指令の指示によって運転台を交換し、誘導によって所定停止位置まで退行した、という事象です。
 分会原因究明委員会は翌日、本人から聞き取りを行いました。当該乗務員は、①隣接線(中線)に貨物列車が止まっていたが、交換の上り特急列車通過後は自分の番だと思いこんでいたため進行信号の現示を見て、レバーサーを前進位置にした②発車後に「何で進行現示の左側に停止現示があるんだろう」と現示方に違和感を持ちつつ運転を続けた③「間違った!」と思い非常プレーキを扱ったが、同時にATS直下による非常ブレーキが動作した④遅れていたが車掌のブザー合図で発車をあせったわけではない⑤信号機も喚呼したなど、当時の状況を語っています。

「三現主義」は本社第一主義

 会社は、当該運転士を13日間(休日を含み)日勤に変更しました。11月6日~12月13日にかけて、本社、支社の幹部が次々と来区し、職場や現地を見学しました。その中で11月8日に緊急対策が打ち出され、11月の訓練会で説明がありました。その対策は、①在線する線名を冠して指差喚呼する②貨物停車目標(出発信号機まで30M位の位置)に停車する③起動開始から出発信号機を越えるまで速度10㎞/h以下とする。というものですが、当該職場社員の意見は一切聞かず、本社の対策を守れという一方的な内容でした。

分会で打ち出した対策は信号機の2度確認


 原因究明委員会は11月8日緊急拡大執行委員会で議論し、11月10日~12日分会職場集会を開催しました。出された意見からは、運転士、車掌ともに①上り特急列車通過後は貨物より旅客列車が優先し、先に出発するのは自分の列車だと思い込み漫然と作業(信号確認)を行った ②信号機名を付けないで喚呼していることが原因であり、設備的にはⅠ信号機に名板がない Ⅱ誤出発防止がない Ⅲ下り本線に下り本線と中線用が並んで設置してあり夜間はどちらのレピーターがわからない Ⅳ安全側線は上り本線用のみである、などの問題点が出されました。そして背後要因として《a》列車順序が変更になる場合は、函館指令センターで交換の有無を連絡してくれることが多い 《b》連絡がなかったので先に発車になると思い込んだのではないか、などの意見が出されました。
 組合員との意見交換を通じて、出発信号機と意識づけるために打ち出した対策は、【1】運転士は主信号機を二度確認する 【2】車所は出発信号機、レピーターを二度確認することを確定しました。
 そして、12月6日~8日には安全座談会の場で自分たちの対策と会社側の対策について議論してきました。組合員からは「会社の一方的な対策は意味がない」「会社が決めた停車目標に停車するのは降雪の時は怖い」「会社の(意味のない)日勤は見せしめだ」など会社側の対策、姿勢に対して不満の意見が出ました。一方「やるからには全員でやること」「普段つもり作業でやりがちなので、二度確認はいいと思う」「会社側に我々の実践を見せつけてやろう」また、車掌からは「総研ではレピーターが基本と教わる」「信号機に対する教育が薄い」など教育の問題点も出され、出された問題点や職場集会で出された設備面の改善と分会が打ち出した対策を全員で行うことを確認しました。

再発防止のために事故の教訓を広める



 今回の事象は、一歩間違えば東海道線来宮事故(1992年6月22日発生)と同様の事故が発生することも考えられます。今回はATS-SN動作と同時に防護無線を発報したことと、貨物列車が発車していなかったため衝突事故を防ぐことができました。  来宮事故以降、出発信号機や入換信号機を冒進しても、クリアランスの手前に止まり衝突事故を防ぐ設備へハード面の対策を実施してきました。それは人間がミスすることを前提にミスしても併発する重大事故を発生させない設備が必要と考えられたからです。
 今回の事象では、出発信号機を冒進したことが大きな問題となっています。そのため、事象発生以降の取扱いや併発事故を防いだ教訓が語られていません。
 青森運輸区では、一歩間違えれば大きな事故に結びつく事象が続いています。この連鎖を打ち切るためにも、職場の組合員全員で原因を究明し、対策を出し合いみんなで実行することが重要です。当該者への責任追及や管理強化・本社からの対策の押し付けは、社員の意識を萎縮させるだけです。
 10月28日、奥羽本線鯉川駅で発生したATS-ps動作で、指令への第一報で速度超過を滑走と報告(指令とのやりとりで速度超過と訂正)した事象や12月31日奥羽本線石川・大鰐温泉駅間で発生した雪害によるパンタグラフ降下処置中の流転について、退庁時に報告書を提出しなかったことなどに対して会社から「隠蔽し嘘をつく職場だ」と言われています。正しく報告出来なかったことに対して「虚偽報告」「隠蔽」と結論づけるのではなく、運転士がなぜ本当の事が言えなかったのか掘り下げることなしに真の原因究明はできません。
 過去の事故を知らない運転士や車掌が多く占めてきています。ミスを隠すために防護無線を発報することを躊躇したり、保安機器を勝手に復位したりすることの無いように、併発事故を防いだ今回の事象から教訓化することが大事だと思います。

このページの先頭へ [↑]