安全への挑戦

職場からのたたかい
~相模線海老名駅における軌道回路故障を振り返って
異常時に強い設備体制を構築しよう!
横浜信通技術センター分会


 8月10日9時49分頃、相模線海老名駅構内で信号機故障が発生し、連絡を受けた信通社員が現場に駆けつけ復旧を行い、16時30分に復旧するという事象が発生しました。
工務部会は、復旧に当たった組合員を交え、原因究明委員会を開催し、様々な視点から討論を行った結果、この設備障害から信号設備改良の盲点や設備21施策の矛盾点を、改めて感じとることが出来ました。今回の障害の発生原因を大きな背景は、相模線は3級線と順位付けが低いことから、信号設備が老朽化しているにも拘わらず、会社が本線程に「お金をかけない」ということに尽きます。
今回の障害原因と想定されているインピーダンスボンドも、製作されてから31年も経過した機器でした。JR東会社の取替基準では30年(私鉄では20年)で取替ることが決められていますが、会社で定めた基準すら守られていないことが明確になりました。何の為の取替基準なのか?青梅線宮の平で発生した木柱折損による死亡事故と設備面では同類です。「倒れるまで使えばよい、壊れるまで使えばよい」という考え方です。
本社は多大な復旧時間を要した原因として、初動体制等、人的要因を挙げているようですが、インピーダンスボンドがオイルレス化によって切り離せない設備となったため、不良箇所の特定ができずに時間がかかり、インピーダスボンドを取り替えて復旧しました。復旧が遅れた原因と同時に予防保全の問題や前述した取り替え基準が守られていない現実から対策を打ち出さなければなりません。ましてや、自らが進めてきた施策がどうなのかなども含めて今回の事象を契機に見直していくことが必要です。
会社は、老朽設備による障害が発生していることについては、全く触れようとはしていません。お金もかけず取替え基準を過ぎているものを使い続けた結果の表れであることを、棚上げにしているのです。

異常時を想定していない体制が露呈

 信号設備の多くはこれまでに、新しい設備に幾度も改良を重ねてきました。今回の障害原因と想定されているインピーダンスボンドも二次側は端子では無く、リードケーブルタイプに改良されたものでしたが、このインピーダンスボンド導入時現場から障害発生時に機器ごとの切り分けが出来ず、原因の究明が難しくなると指摘されていました。仮に端子タイプであったとすれば、相当に早い段階で故障箇所を特定することが出来たと思います。信号設備は技術革新が目まぐるしく、新しい設備に改良されていますが、障害時の復旧や原因究明を難しくさせています。
会社幹部は常々社員に「列車運行に影響を及ぼす障害が発生した場合に、1秒でも早く復旧させることが皆さんの使命です」と言っています。しかし、会社の考え方は機械やシステムが壊れた想定をしていません。そのため「機器ごとの切り分けが出来ない」「常態的に点検出来ない見えない設備になっている」など保守や異常時の対応が簡易に行えない器機となっています。すなわち異常時を想定した器機導入や社員配置となっていないことが、そもそも間違っているのです。

発生した事象から施策を検証する


 一方で障害発生原因の究明に社員が奔走している事とは別に、会社は関係機器の振り替えや取替を指示しました。このことは、原因の特定よりも列車運行を優先にしている姿勢の表れです。今回もインピーダンスボンド絶縁不良(絶縁抵抗が全て規定値以下)が原因だと想定できますが、原因が特定出来ないまま取替て復旧となっていることから結局、障害発生のメカニズムも解析されず、今後の対策に繋げることが出来ません。改めて障害復旧のあり方について問うべき課題であり、「信号社員を技術屋として信頼していない」会社の姿勢に対しても、現場社員の側に立って矯正していく必要があります。
さらには、今回の障害対応を設備21効率化施策の視点からみても、つくづく会社施策のいい加減さを痛感しています。工務職場ではJRは管理のプロ、パートナー会社は施工のプロだとして今の施策は進められました。会社が当時提案した効率化案によれば、技術センター社員は事故の処理を行わないとしています。障害や事故復旧にあたると明記されているのは、メンテナンスセンターの社員だけです。しかし、メンテナンスセンターは10名程度の社員数です。「設備21」導入時交渉では「こんな少ない社員数で本当に大丈夫なのか?」といった組合・職場からの危惧した意見が出され会社側の激しいやりとりがありました。しかし、会社は「パートナー会社を活用しますから大丈夫です」と豪語していたのです。

設備21見直し交渉で要員の見直しを

 今回の信号機事故でも発生直後、現場に駆けつけたJR社員はメセから2名、技セから10名の計12名に対し、パートナー会社はたったの3名です。何故、技セ社員が10名も障害復旧に駆けつけなければならないのか?設備21の時に決定された活用すべきパートナー会社がたった3名というのが現実です。
 会社はこういった現実を真摯に受け止め、異常時に強い体制を創るためにも設備21の見直しのために新たな効率化施策案を練り直すべきなのです。しかし、今回、本部に提案された新たな効率化案では、更なるパートナー会社への業務移管が提案されるなど、パートナー会社の体力の問題や、この間多発している死傷事故等の安全問題に対する私たちの認識とは大きく乖離した提案内容になっています。間もなく地方交渉が始まりますが、私たち工務部会は横浜地本と連携しながら、会社側にこういった現実を突きつけ、検証過程で発生した課題をおいて本体社員の要員見直しを前提に「各系統ごとの譲れない要求を勝ち取るたたかい」を進めて行きたいと思います。

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