安全への挑戦

職場からのたたかい~高崎運輸区分会原因究明委員会
乗務員の取扱い誤りだけではない!~再発防止に向けた真の原因究明と安全風土を確立するたたかい~

俺だけの責任?会社への不満と不信

分会報告集会
分会報告集会

 2009年10月20日、八高線・高麗川~毛呂駅間のATS切換箇所で2265D列車にATS異常鳴動が発生しました。この区間はATS-P型への切換工事中であり「工事用地上子の設置」が適切に行われず、ATS-SN型区間においてP型が立ち上がる事象が発生しましたが、そのまま運転が継続されました。支社は、この事象を無保安状態で運転したとして問題とし、原因を運転士の取り扱いミスとする速報を職場に掲出しました。
 速報を見た当該運転士は、「確かに取り扱いに適切を欠いたかもしれないが、俺は指令の指示に従っただけ。俺だけが悪いのか?!」と会社に対する不信や不満をあらわにしました。分会と指導員は本人から話を聞き、事実の違いや運転士だけが一方的に責任を追及されている速報の問題点を指摘し、訂正を求めました。

組合だからできた真の原因究明

 10月23日、高崎運輸区分会運転士分科会は原因究明委員会を開催し、事実経過および車両の問題点について議論しました。また、地本は11月4日に関係箇所である高崎運輸区分会運転士分科会、高崎車両センター高崎支所分会、支社運輸分会と合同の原因究明委員会を開催し、①車両故障が発端にもかかわらず触れていないこと(当該車両は8月8日異常鳴動が起きて原因が特定されないまま10月16日から運用に組み込まれていた)②「ATS-P工事中の取扱い」について当事者(指令員及び運転士)は誰も適切な措置ができなかったこと③速報に事実と違うことが記載され、運転士の取り扱いのみが問題とされていること④長時間にわたる事情聴取が行われたことなどの問題点を明らかにしました。
 原因究明委員会の議論に基づき、当該車両の試運転を予定していましたが、会社は原因が特定できたとして一方的に中止し、運用しました。そして、その車両で再度同現象が発生しました。私たちが車両の問題点を指摘したにもかかわらず職場の声を無視し、当該車両を運行した会社の姿勢に組合員から怒りと不信の声が出されました。

団体交渉を通じて認識の一致を図る

 地本は、「八高線・高麗川~毛呂駅間におけるATS故障および保安装置が動作しない状態で走行した事象に関する申し入れ」を提出、2回交渉を行い①原因究明②修繕後の試運転③事情聴取の問題点④速報の在り方⑤八高線のCTC指令境界の見直しを求め議論してきました。そして、事情聴取がQ&A方式の質問で運転士の取り扱いのみを問題にした責任追及に対し、今後は背後要因も含めて原因を究明するために事実確認することと正確に事実を周知することを確認しました。また、高麗川駅を管理する拝島CTC指令に工事の連絡がなかったことも明らかになり、支社間と各主幹の連絡を密にすることなども確認しました。

職場から“原因究明の安全風土”を確立しよう!

真の原因究明を職場から創り出そう!
真の原因究明を職場から創り出そう!

 交渉終了後、分会は直ちに報告集会を開催しました。集会では、当該運転士本人から「自分の問題を組織全体の問題として受け止めて、交渉にまで高めてくれたことに感謝する。仲間たちに同じような思いをさせないために決意して闘ってきた。速報の問題点、指令の対応など突発的な事象で戸惑い悩んだ」ことなど、自分の気持ちを語ってもらいました。
 また、①今回の事象について確報を出す②試運転については現場からの要請に基づいて判断する③ATS-Pの取扱い教育は再度行うこと④事情聴取は原因究明のために行うこと⑤速報について原因が確定できない場合は記載しないことなど交渉で会社と確認した内容を報告しました。そして、今後も安全風土の確立を目指して真の原因究明を行うと共に、会社としっかり議論していくことを明らかにしました。組合員からは、仲間の想いに立って、交渉に取り組めて良かったという感想が出されました。
 今回の取り組みを通して、乗務員の責任のみに切り縮めてしまう会社の体質にメスを入れ、会社の姿勢を正すことができました。また、事故は様々な要因が重なって発生し、背後要因を含めて明らかにすることで真の原因が究明されます。乗務員の立場に立って再発防止に向けた原因究明委員会を開催し、当該運転士本人の想いや不満を受け止め、様々な角度から議論し団体交渉を行い、職場と地本が一体となって解決していくことが重要です。このたたかいで安全第一の職場風土の新たな地平が切り開けたことが確認できます。この成果を全組合員に訴え、職場からの闘いを今後も推し進めていきます。

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